八坂神社でのロケ
2022年3月13日(日)6時15分~6時30分
八坂神社ロケ
「祇園」篆額について
当店2代目「田丸勇」が昭和28年に「祇園」篆額を奉納させていただいております。某番組のロケ撮影をキッカケに篆額について改めて調べると色々と興味深い事が解りましたので、簡単にですが今回はこの篆額についてご紹介いたします。
奉納の目的
有名な西門(正門は南門)から入って、左方向に歩いていくと、篆額が現れます。
篆額の右端には「皇太子殿下 御訪歐御安泰」とあります。
「御訪歐」とは欧州への外遊を指しますので、平たくいうとヨーロッパ外遊の旅の安全を祈願した額という事になります。
この外遊での一番の目的は「エリザベス女王の戴冠式」へのご列席です。
現女王エリザベス2世が即位されたのが1952年(翌53年戴冠式)でそこから70年、これは英国史上最長の在位とのことです。
協賛者
協賛者を見ると筆頭に「賀陽恒憲」と記されています。こちらは旧宮家「賀陽宮恒憲王」の事であり、明仁皇太子殿下から見ると「母のいとこ」の関係となります。
次に当時の吉田内閣国務大臣「大野木秀次郎」さん。
実は秀次郎さんは私の祖父が地盤を継がせていただいたり、曾孫さんが私の小学校時代のクラスメイトだったりと大変ご縁がございました。その秀次郎さんが私の曾祖父ともご縁があったとは今回まで知りませんでした。
他にも鳩居堂の熊谷さんなど細かく拝見すると今にもつながる大変興味深い協賛者の方々でございました。
当時はご賛同いただきまして誠にありがとうございました!
正款法
革新の遺伝子
「祇園」という文字の右側に「正款法」と大きく記され、傍らに「正款法開祖田丸勇謹作」とあります。
「正款法」とは2代目が考案した篆刻の新技法の事で、この篆額は篆刻技法を革新させようと試みたものでもあった訳です。
篆刻の世界では「字法」「章法」「刀法」という篆刻三法という基本的技法が確立されており、原則的にここから外れた事をするのはNGという世界です。いわゆる業界の常識といった類のものです。
正款法に込めた想い
- 「篆刻の道は『荘重(おごそかで重々しい)』であり、そして『精采(鮮やかなつや)』加え、『温雅(穏やかで上品なこと)』と『重厚さ』を加えるために、新たな面が開拓される必然性がある。」
要するに既存技術原則に満足せず、より高いものを目指し、技法も革新させていく必要があると考え、実行したのだと思います。
言うは易く行うは難し。相当な苦労があったものと推察されます。
ただ口で説くだけでなく、様々な協賛者を募り、時節を鑑み自分の考えを世に問うたその「実行力」。
これは5代目である私の心を打つものがありました。
私もこうした革新の遺伝子を継承し、新たな伝統を創っていけるようにこれからも精進したい。
そう思わせてくれた八坂神社ロケでした。