田丸印房 100年の歩み

"京うふふスタンプ"の原点



大正元年 創業

当店は大正元年から初代田丸安ノ介が京都二条寺町で商いをはじめ、創業より100年に渡り店を守ってまいりました。

創業時は雑貨店として商いを行っておりましたが、その後印章需要の高まりに歩をあわせ、商材を印章を中心に据え、京都の繁華街の印章専門店として商売を行ってまいりました。

 



京都近郊への文化発展に寄与

二代目 田丸勇の頃には「祇園祭の菊水鉾」の『篆額(てんがく)』をはじめ、「比叡山延暦寺」や「八坂神社」にも石碑や天樂を寄贈するなど京都の文化発展に寄与してきました。



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こうした活動の傍ら、近所の子供達相手には「目玉のまっちゃん(二代目 尾上 松之助)」の似顔絵などをゴムに彫ってあげていたそうです。時代は大正、写真もまだまだ一般には普及していない中、日本初の映画スター尾上松之助の"はんこ”を彫って持って帰れるという事で早朝から列を作るほど人気だったそうです。

これが今日、我々が作る『京うふふスタンプ』の原点となりました。
今では機械も使用して手作りしておりますが、当時は全て手彫りで彫っていたそうです。





"京うふふスタンプ"への
3つのこだわり

01各こだわりの素地

"京うふふスタンプ"へのこだわりの素地は当店が"はんこ”屋であり、 このスタンプは『"はんこ屋"が作ったスタンプである』という点にございます。これはスタンプ製造にあたり使用する基礎技術が「文字」を彫刻するという技術を基に設計・製作されると言い換えることができます。

具体的には、「絵を描く」という視点から着想するのではなく、漢字のように「線を組み合わせる」という視点から図柄を構成していくという事です。
この点が最終的な仕上がりに差を生んでまいります。

02デザイン線へのこだわり

当店のスタンプデザインは線の質にこだわって製作しています。
3000種類以上の京うふふスタンプは、そのほとんどが当店書き下ろしのデザインです。

なぜここまで書き下ろしにこだわるのか?
それは、最終商品がイラストではなく"はんこ"だからです。
"はんこ"になるということは、最終的に「見られる」のではなく、「押される(利用される)」ため、 この終着点を前提に線を構成していく必要があります。

そのため、デザインの熟慮に加え、定められた枠の中に「バランスよく」かつ「スタンプに適した線種で描く」といった点にこだわって作っております。

こうした"こだわり"は、完成したスタンプにおける「線の美しさ」に直結いたします。
お客様からは 「田丸印房の"はんこ”が細かい線がきれいに出る」とお褒めいただいております。

03押し易さへのこだわり

私達はこれまで、お客様が印を押される際にどういった点に困っておられるかをお客様自身からご意見を頂戴し、ものづくりに取り入れてまいりました。

特に多かった声として、
・「インクがかすれて印影が綺麗にでない」
・「押さえる時に手が痛いのでたくさん押すと疲れる」
・「不要な部分(ゴム枠など)にまでインクが付いてしまう」
という声が⋯
そこで、当店ではこうしたお困りについて、以下ような対策を施しております。

ゴム面の深さ

当店のスタンプ製造の根幹部分になりますので、詳しくは記載できませんが、ゴム面の凹凸にこだわって作っております。このことにより”インク切れ”が良くなり、軽い力でスタンプを押す事が出来きます。
この凹凸技術こそが”はんこ屋”として、印章を幾千、幾万と彫ってきた技術が活きている部分だと考えております。

角落とし

四角の台木は、スタンプを押す際に角の部分が手に食い込んでしまいます。 これを防ぐために当店では、持ち手部分の四隅角を予め削っております。
地味な点ですが、やってみると押し心地がかなり違うのにお気付きになられると思います。

実はこちら、従業員が一つ一つ手作業で削っています。だからまったく同じではなく一つ一つ微妙に形が違うのです。コロンとしたフォルムに手作業の温かみがこもっています。

余りゴムカット

スタンプを押した時、「スタンプデザインとは関係のない部分も紙に付いてしまった」という経験はないでしょうか。
これを防ぐために当店では予め、スタンプデザイン上不要な部分は”予めカット”しています。 これにより、本当に必要な部分のみにインクが付き、綺麗に押せるというわけです。
実はこれも一つ一つ手作業でカットしてるんです。

こだわりを支える
職人の手仕事

前述の通り、私達はこの時代においても”はんこ”の製造工程において、あえて手作業工程を残しております。
正直に申しますと、効率だけを追求した場合、全行程で機械を用いて素早く大量に作る事は可能です。
一方で品質面やデザイン面などにいては、"失う部分””諦める部分”が出てまいります。
伝統工芸や美術芸術分野、さらには教育分野に携わられている方におかれましては、こうした効率化・画一化が生み出す功罪について、ご理解いただけるのではないでしょうか。

”ものづくり”を生業にしておりますと、その製造方法について見直しを迫られるタイミングというのが必ずやってきます。
こうした時、私達はいつも原点の自問に立ち戻るようにしています。
「この商品はどなたに届き、どのように使われ、どのように役立っているのか?」
この自問の結果、私達は製造工程で人の手が介在し、製品に手作り感が残る手法を採用しています。

これは偏(ひとえ)に1つ1つ大切に作られたものの良さを理解いただける方が多いからに他なりません。
そしてこのこだわりは、進展するデジタル社会においては、さらに重要度を増していくと確信しております。人の「手」から「モノ」に伝わる想い(波や粒)を大切にしていきたいと考えます。

最後に
令和の時代に入り、世の中は大きく変化し、仕事の形も大きく変化しつつあります。
こうした時代において、私たちは歩調を時代にあわせつつも、自身の中核をなす彫刻に係る技術については守り、研鑽し、次の時代に襷(たすき)をつないでいけるよう、日々精進して参りたいと考えております。

今後とも田丸印房を末永く宜しくお願い申し上げます。

田丸印房 五代目 田丸 琢

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