スタンプを上手く組合せるコツ

~組み合わせの先にある無限の可能性~


春・夏・秋・冬

スタンプの見本押しとして、京都のお店で実際に展示しているものの中から一部を季節ごとにご紹介します。
スタンプを押される際に少しでも参考になれば幸いです。


〜 春 〜


春の蹴鞠

【ポイント】
公家達が桜の木の下で蹴鞠に興じている風景です。
構図として桜の木々を周りに配すことで、上から蹴鞠の様子を眺めているような印象になっているかと思います。公家よりも上位であるお殿様のような気分にな りませんか。
また、一字印が押してあることで、この葉書が一つの作品のように見える効果を生み出しています。ここが実はポイントで、一字印の効果あなどるなかれです。


鳥歌花舞(鳥歌い花舞う)

【ポイント】
言葉通りの図柄を再現している一枚になっています。
「鳥歌い」は複数の鳥を配置することで、楽しげな印象を与えてくれています。これが一羽だけだとまた違った印象になりますよね。

次に、「花舞う」の部分ですが、あえて花びらを散らすのではなく、道に咲く花々を表現することで、「日常の中にこのような情景がいつでも潜んでいるんですよ」という事を現してみました。

人と牛車を配置している点も、この「道」を意識させてくれ、「日常」の表現に一役かってくれています。


さまざまの事思ひ出す桜かな

【ポイント】
はじめに、この芭蕉の句をごく簡単にですが、ご説明しておきます。

”芭蕉が脱藩する前に主君"良忠"と花見の宴で見た思い出の「桜」。
数十年後に"良忠”の息子”良長”に招かれた花見の宴で、”良長”に”良忠”の面影を重ねながら見る「桜」は、 二度と見れないと思っていた、かつての「桜」のようで、これまで芭蕉に起こった「さまざまな事柄」を思い出させてくれた”

という意味が込められています。
そこで、芭蕉の思い出が詰まった所縁深い「京」を、今目の前にある「桜」越しに見ているという構図にしてみました。
なお、京は遠景で配置することで、「一つ」ではなく「さまざまの事」という点を表現しています。


〜 夏 〜


夏海を満喫する波乗り平助さん

【ポイント】
京うふふスタンプの人気キャラクター「平助さん」が楽しそうに波乗りされているところです。

平助さんが乗っている波と、海の波を同じ形状のにすることで、統一感が出て、同じ海の波を乗っているように見えると思います。

また、平助さんを他の波よりも少しだけ下に押すことで、奥行が出ていますよね。ちょっとした事ですが、効果有りです。

「夏」の表現には、入道雲とカモメを配置することで、夏真っ盛り感が出ているかと思います。


清水の阪のぼり行く日傘かな

【ポイント】
この正岡子規の句を詠むと、多くの方が

「夏の暑い時期に清水寺に向かって産寧坂(三年坂)を上っていく日傘をさした和服姿の女性」 を思い描くのではないでしょうか。

まさしく子規もそのような光景を眺めて、この句を詠んだのだと思います。
それほどに、この句は京都の酷暑を正しく現しているように感じます。

このように、読み手が頭の中に絵を想像している(想像できる)という事を前提にするならば、 あえてその想像(頭にある絵)を崩すことなく、想像を掻き立てる手助けをするだけで良い場合もあるのではないでしょうか。

そこで、この葉書では真ん中に句を配置し、送り先の方に京都の夏の情景を想像して貰うと同時に、その想像の手助けとして「清水寺」と「青々と葉を付けた枝」という「場所」、「季節」を 分かり易いデザインで右下に置くだけにしてみました。

なぜ右下かというと、多くの人は左上から右下に向かって目を移していきます。 そのため、先に句を読んで貰い、その上で清水寺を見て貰いたいがために、このように配置しています。


暑中見舞 向日葵燦燦

【ポイント】
これは暑い夏ですが、元気に楽しんで過ごしていきましょう!という事を伝えるのに主眼を置いています。
そのため、枠いっぱいに夏の元気の象徴でもある向日葵を重ねています。

また、向日葵の花言葉にある「愛慕(あいぼ):愛して、懐かしみ慕うこと」の意味も込め、 相手に語りかけている女性を置くことで、暑中見舞いの意義である相手の状況を慮るという事にも配慮してみました。


コンチキチン♪

【ポイント】
京都の夏の風物詩「祇園祭」をデザインしてみました。

ポイントはタイトル通り「コンチキチン♪」の鐘の音が聞こえるような、そんな楽しくて活気があってワイワイしているイメージで作っています。

具体的には「鉾」を主役にするのではなく、提灯をたくさん配置して、それを参加者(人)にみたてることで"賑やかさ"を表現しています。他にも色をたくさん使って、様々な人々が行きかっている様子を表現したり、違う大きさの提灯を配置し、明るい黄色で押すことで遠近感をぼかして全体に光彩が放たれているような効果を狙っていたりします。


夏来にけらし

【ポイント】
これは「梅雨が終わり夏がやってきた」という情景を表現してみました。

梅雨の表現として「カエル」と「カタツムリ」を配し、少しものさみし気に雨の季節の終わりを語ってもらっています。
一方で夏の表現として頭上から「トンボ」に夏の到来を告げてもらいました。トンボは少し秋というイメージもありますが、実は夏が最もトンボが多い時期なんですね。

7月の後半あたりの時期を表現したい際に参考にしてみてください。


〜 秋 〜


秋深き 地蔵喜ぶ 紅葉雨

【ポイント】
秋の紅葉の素晴らしさを全面に押し出してみました。
ポイントは色です。紅葉は言うまでもなく、散る間際に見せるあの色のグラデーションの素晴らしさが魅力です。したがって、それをできる限り近づけるように様々な色を使って押しています。

しかし、ただ単にたくさんの色を使うだけでは芸がありません。左の画像をよーく見てください。色に意図が隠れているのに気づきませんか。

そうです。紅葉の度合いが木によって違うんですね。
画像右の葉っぱは鮮やかな朱や黄色になっていますが、画像左は緑や茶が中心の色使いになっています。
実際の紅葉も近くで見ると、木の種類や日の当たり方で紅葉の度合いは全然違いますよね。グラデーションインクのご使用がお勧めです。
このように工夫することで、実際の紅葉に近づけるとともに、左の緑や茶の木が右の朱や黄色の鮮やかさを引き立てる役を担ってくれるのです。お地蔵様も喜ん でくれてますしね。


千秋萬歳

【ポイント】
中央に押してある「千秋萬歳」は長寿を願う慶賀の言葉です。 言葉の他には赤とんぼ、稲穂、カカシを押しています。このことで、容易に秋が連想できるデザインになっています。
しかし、この葉書の意図は稲穂が「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という有名な句を連想させるとともに、「千秋萬歳」という言葉 で長寿を願うという言葉を伝える点に実はあります。

例えば敬愛する年配の方などにお送りする際に、稲穂と送り先の方の人生を重ね、「長い年月をかけて、経験という多くの実を付けられているにも関わらず、謙虚な心をいつでもお持ちの○○様、 いつまでもご健勝に過ごされる事を心より祈っております。」
といった意味合いを込めてお送りすると喜ばれるのではないでしょうか。


赤とんぼ 家族連れて 秋連れて

【ポイント】
まだ木々の葉は青く、花咲く中、赤とんぼが飛んできて、夏の終わりと秋の訪れを感じる情景を表現しています。

この葉書を見ていると不思議と口角が少し上がってしまいませんか?
赤とんぼが家族連れで飛んできている部分とお地蔵さんの笑顔が、葉書全体を柔らかくしてくれているのかもしれません。


〜 冬 〜


ぼたん雪 降る日は静かに 背を丸め

【ポイント】
これは冬の寒さを表現したデザインになっております。 ポイントとしては、真っ白な葉書の左上と右下に四角のトーンスタンプを押す事で、間の空間が限定され、葉書全体が締まって見える効果を狙っています。

また、丸窓の外の雪は異なる大きさを用いることで奥行が出ていますし、女性と猫だけでなく、一見意味の無さそうな行燈を配置することで、 広がりが出て部屋の中であるという事を意識させてくれます。こうした装飾や押し方で生まれる空間を上手く活かすと綺麗な仕上がりになる と思います。

さらに、この行燈に黄色の丸トーンスタンプを押すと、こんどは時間が一変して夜になることでしょう。色々と試してみてください。


長楽無極

【ポイント】
「限りなく楽しみが続くこと」を意味する「長楽無極」という言葉を押しています。
あえて冬にこうした言葉を用いたのは、自然界では冬は厳しさの象徴でもありますが、そんな状況でも自分の心持ち次第で 楽しみは見い出せるという事を伝えたいがためです。
デザイン上では、こうした意味を持たせるために、まず冬を示す雪の結晶スタンプを使っています。
次に、「楽しみ」ですが、人それぞれに「楽しみ」異なります。しかし、何にでも「○○に花が咲く」という表現をすると思いますので、「楽しみ」を表現するのに、ここでは「花」を用いました。また、「限りなく」という言葉は「花」をたくさん押す事で表現しています。 ここでのポイントは「花」を枠の外にはみ出すように押すことで、まだまだ周りに「花」が咲き誇っている =限りなく咲いているという印象を狙っている点です。


忍辱す 雪原に立つ 鶴ごとく

【ポイント】
テーマは「力強さ」です。
デザインとしては、寒い雪原を一羽の鶴がヒタ歩く姿を表現しています。

テクニックとしては、銀色世界の中に青色を混ぜることで、冷たい印象だけだったデザインに希望を持てるような印象を与えてくれます。
また、顕微鏡で見るような雪の結晶を使うのではなく、昔ながらの雪輪文様を使うことで、 おかしな表現かもしれませんが、冷たい雪ではなく、温かい雪になるように工夫してみました。
どうでしょうか、温かみが出ていますでしょうか。

〜 その他 〜


錦鯉

【ポイント】
池の水面の光や岩などをトーンスタンプで表現しています。

また、鯉を錦鯉に見せるテクニックとして、スタンプを押した後に顔彩で色付けしております。 なお、顔彩はスタンプの図柄からはみ出すように押すと、淡い色合いとなり水中の雰囲気が出ますので、良かったら試してみて下さい。


共生

【ポイント】
木々の合間から、動物の生活を静かに覗いているようにみせるため、左上と右下に枝を重ね押し、枠外から枝が生えているように見せています。

小鳥達の配置については、鹿の目線上と小鳥同士の目線を意識して押す事で、それぞれがコミュニケーションしているように表現してみました。
なんだか楽しげな様子ですよね。


忍術の応酬

【ポイント】
忍者の素早い動きを表現するために、スタンプの濃淡を使い分け、残像を生み出しています。 さらに、三本線スタンプを使うことで、動きをさらに素早くみせることと、動きの方向性を示せるように工夫してみました。

また、これに瓦屋根スタンプなどを組み合わせてると、さらに空間や距離感が出てきて面白くなると思います。


古池や 蛙飛び込む 水の音

【ポイント】
ここでは、音が聞こえる前の一瞬の静寂さを表現することに主眼を置きました。
あえて、図柄をシンプル(2種類)にし、左半分を空白にすることで、「動」の傍らにある「静」を表現してみました。

このように、図柄を重ねるだけでなく、こうした空白を上手に使ってあげることで、新たな表現が生み出せることもありますので、是非挑戦してみてください。


古極楽浄土

【ポイント】
極楽という場所はイメージでしかないため、万人が抱くイメージを再現したデザインにしています。イメージで重要になってくるのがデザインもさることながら色が重要になってきます。

そこでまず、仏様の後光を黄色のトーンスタンプで表現し、蓮は2種類のピンクと2種類の緑を組み合わせて、鮮やかさを出しています。

また、雲は瑞雲を表現するためにメタリックインクを4色使って華やかさを演出してみました。このように様々な色合いを用いることで、光溢れた世界が少しは表現できているのはないかと思います。

 

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