石印材の王者「田黄」【石印材3】
ここでは、石印材の中で長年王者として君臨し続ける「田黄石」について、私なりの見方をご紹介したいと思います。
●田黄石とは
田黄石とは、そのものズバリ、石印材の王者です。 価格も他の石に比べて、群を抜いて高価なものが多いですが、古い物や新しい物が、かなり色々と出回っているため、その価格もまた、実に様々です。
その値打ちのゆえ、偽物が非常に多く、よく真贋がとわれます。こういった点も王者たる特徴なのかもしれません。
では、そもそも田黄とは何を指すのでしょうか。実は田黄は田石の中の一つなんです。田石とは、寿山郷と呼ばれる数キロ四方の山の中の水田で採れる石のこと を指します。 その寿山郷の中に田黄坂と呼ばれる一帯があり、そこから採れる石が「田黄石」と呼ばれています。
田黄は他の石材と違い、この田黄坂やこの坂近くの田んぼの中に転がっていたようです。(他の石は普通、採掘を通じて採集されます。)これらは、中国清代初 期には採り尽くされたと言われていますが、現代でも掘り出して採られているのが事実のようです。
しかし、実際には金の鉱脈を探し出すようなもので、中には破産してしまう方も沢山出ているようです。
中国は実に謎多き国です。我々のまわりでも色々と情報が行き交っていますが、真偽の程はまだまだ判らないことだらけです。
なににせよ魅力的な石にかわりはありません、みなさんもあちこち見て回ってみて下さい。 ただ、田黄に限っては、他の石のように掘り出し物と言う物は残念ながら極めて少ない(ほぼ無い)ようです。
●田黄石の種類と目利き
田黄には、温、潤、細、結、凝、膩、の六徳が揃っているといわれています。 これが意味するのは「印材として最高の質」だということです。
よく蘿蔔紋(らふくもん)や紅筋(こうきん)、黄色い皮がないといけないように言われますが、 私はこの六徳を目安にしたほうがいいと思います。
なぜなら蘿蔔紋や紅筋は他の石でも出ることがありからです。
また、田黄にはその色合いから様々な名前も付けられています。
黄金黄、鶏油黄、橘皮黄、熟栗黄、枇杷黄、桂花黄、金抱銀(金裏銀)、銀抱金(銀裏金)などです。
これによってランク付けもあるようです。以下に少しですが、写真を掲載してきます。
枇杷黄
透明感は余りありませんがしっとりした石です。
硬田
部分的に蘿蔔紋が密集しています。 なぜか中国の方がすごく誉めてくれる石です。
枇杷黄
これも中国人の方が好む色合いの石です。 この石の巨材で何百万円もする物を見たことがあります。
鶏油黄
少し荒い蘿蔔紋が出てます。
金抱銀(金銀田)
黄色の中に白い蘿蔔紋が出てます。
枇杷黄
この石は透明感の有る部分と無い部分に分かれます
銀抱金(銀裏金)
銀抱金 透明感は余りありませんがしっとりした石です。
渓管独石 (銀裏金
●劉禅の考え
上の写真の通り、石それぞれに特徴があると同時に、色合いというものは人によって好き嫌いがあるものです。 田黄という名前が付いているだけではそれは良材であるとは言えないのでは無いでしょうか。 博物館に収まっているような一級品ばかりが田黄だとは言えないのでは無いでしょうか。 私などはそう思ってあれやこれや考えるほうがきっと楽しいと思いますし、このような名前や種類にだけこだわるのではなく、 自身の好きな色形、鈕などで選ばれれば良いのではないかと思います。
勿論、古い物や一級品はそりゃ身震いするほどで、私も欲しくなりますが値段がまったく違います。 何百万円単位(数千万というものもザラ)です。小さな物でも何十万円です。それでも、色々と他の石に触れた上で、実際に手に取ってみると、それだけの価値があるような気もします。
また、この石は粘度と硬度のバランスが素晴らしく、彫り味も最高です。
石印材を集めるのならやはり一つは持ちたい石だというのは間違いありません。しかし、その一方でその入手難易度も高く、私もこの石では何度も失敗しています。
この写真を参考にみなさんもあちこちで田黄にチャレンジして、自分自身が最高だと思う田黄石を探してみてください。
良い物が手に入れば又写真でも送ってください。 ご意見ご感想お待ち致しております。
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