石印材の彫り味

ここでは、様々な種類の石印材を実際に彫って感じた私の感想をご紹介したいと思います。
ただし、自然の物ですので一定の評価をだすのは非常に難しいため、あくまでも私個人の経験上の評価です。
これを一つの参考にしていただき、一つの石にこだわるのではなく、色々な石を彫って見て下さい。また、1ランク上の石を彫って見るのも良い経験になります。


◆寿山石(じゅざんせき)

一番安価な石です。
いい物に当たればかなり彫りやすい石でもあります。
ただし、質が安定しないようですので、当たり外れが出やすい石というのが特徴です。
しかし、安いので練習に数を彫るのなら沢山彫れるのではないでしょうか。

◆青田石(せいでんせき)

篆刻を習いに行かれると彫らされるのがこの石です。
今一番ポピュラーな石ではないでしょうか。入ってくる数も豊富ですので、色んなサイズで練習するための石としては、最適だと思います。
昔はもっといろんな色が混じった石でしたが、最近は薄い緑色をした物になって来ています。
名前から来るイメージが強いのかもしれませんが、依然に比べて少し彫りにくくなって来ているような気がします。
もし、複数の色が混じったものを見かけたら彫ってみてください。
パリパリ彫れるのがこの石の特徴です。素朴な彫り味がだせます。


◆巴林石(ぱりんせき)

近年、寿山石に取って代ろうという勢いです。 切石にも昔は美しい凍石などが沢山混じっていましたが、最近なかなか見かけなくなり値段もうなぎ上りです。 写真左の白っぽいものが比較的安価で柔らかい石と言えると思います。右の透明感のあるほうは少し値段が高くなりますが彫り易い加工しやすい石です。 玉根石とか山東石とか言う名前がついている場合もありますが、同じ石だと思います。 どちらかというと寿山石よりも質の良い高価な石の彫り味が楽しめます。 力強い彫り方の方よりもテクニシャン向きな石かもしれません。したがって、力のない方(女性)向きだと私は思います。一時期、パリパリはがれる悪質な物が入ってきたことがあり、その時のイメージでこの石を嫌う方もおられますが、そういうものを避けると(なかなか難しいですが)いい石です。 また、見た目も美しいため、人に印を彫ってプレゼントされるのにも良いと思います。

◆東北凍(とうほくとう)

遼寧凍と呼ぶ場合もあります。
少し透明感がありうすい緑色をしており、大変粘りのある石です。
小さなサイズの印や細い線を出すときなどに便利です。
粘りがあるので字がとびにくいです。ただし、そのぶん大きな印を彫るときは大変です。
昔はこんな石は何所で採れるのかも名前も分かりませんでしたが、今はそれなりに多く入ってきているようです。
この石の良い物は白くて透明感のある今から思えば燈光凍と呼ばれていた石がこの石のように思われます。

◆肖山紅(しょうざんこう)

赤い色の寿山石の赤い石で、紅高山などによく似た石です。
一見堅そうに見えますが結構柔らかい石です。ボソボソっという彫り味です。
比較的大きめのサイズに白文を彫るのが向いているかと思います。

◆倚天石(いてんせき)

最近になり比較的、沢山入るようになってきまたが、昔は珍しい石でした。 青海凍と言う名前で入ってきたこともあります。 かなり透き通った物もあり、これもよく燈光凍と間違われた石です。 粘りがあるような、ないような、その中間の彫り味といったところでしょうか。あまりしっかりとは彫れません。 したがって、面白い味を出したい方、見た目が美しいので(白が基調)プレゼントなどには向いていると思います。

◆緑凍石(りょくとうせき)

薄緑色の広東緑や東北凍に良く似ている少し堅めの石です。
細い線質のはった文字や金文などを彫るのに向いています。 ですので、細い線の白文には適しているかと思います。
この石にそっくりな「玉」という石もあります。が、こちらは手(鉄筆)で彫るのは無理ですので、注意して下さい。(特に中国のお土産に多い)

◆ウイグル平頭石

巴林石に良く似た石です。、、と言うよりも巴林石に混じって入ってきたり巴林石として入ってきていました。 彫り味もそっくりです。同じ石といってもいいぐらいです。もしかすると、分ける必要も無いのかも知れません。 違いは色のパターンが一定で地味なグレーを基調とした物しか無いと言う事です。 もちろん良い石もあるでしょうが、切石として入ってくるのは、ワンパターンの色です。 そのかわり彫り味もムラが出にくく一定に彫れるので非常に彫り易いです。確実に彫りたい時に便利です。

◆広東緑(かんとんりょく)

有名な石で、かつては非常に高価な物でしたが、今は当時の10分の1ぐらいの価格で手に入れる事ができます。 見た目は、緑が大変美しい石です。色々な緑のパターンが有り、独特な彫れ方をします。 例えるなら、ガラス質なイメージです。ジャリジャリ彫れます。(中にはムッチリ彫れる物も存在します) モッタリした線質がでますので、利用すると結構おもしろい印に出来上がると思います。


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